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炎上のトレンド市民をコロナから守りたい行政のためのリスクコミュニケーション①

2021.08.02

未だコロナの感染拡大が収まらない中、市民の行動変容に課題を持つ行政からの相談が多く寄せらせるようになりました。
多くの自治体では、コロナ禍で平時の広報活動とは異なる市民とのコミュニケーションにおいて、さまざまな課題が露呈しました。すでに何らかの行動をはじめているけれど、なかなか変化につながらず歯がゆい思いをしている方、不安な気持ちを抱えながら組織内で孤軍奮闘している担当者の方も少なくありません。

行政のリスクコミュニケーションへの取り組みは古くて新しい問題です。

自治体は地方分権一括法の施行等により、地域社会の諸課題に対してより自主性を持った、市民との対話と協力に基づいた地域づくりの推進が求められてきました。

大きなきっかけとなったのは3.11の震災・東京電力福島第一原子力発電所の事故でした。
この時、放射能汚染の影響について、多くの専門家が情報発信し、メディアでも多くの報道がありました。しかし「地震防災」「原発依存」「食の安全」「政府の危機管理能力」「情報の正確性」などの分野で安全神話が崩壊し、市民の不安要素が拡大し、信頼性は大きく損なわれ、政府、官庁、電力会社などのリスクコミュニケーションに避難が集中しました。

この経験によりリスクコミュニケーションはしばしば、行政や専門家らが一般の人々にもわかりやすいことばや形式で伝えることが何より大切だと誤解されますが、本当に必要なことはむしろ逆で、市民の疑問や不安を受けとめ、なぜそう思い考えるかを市民から学ぶことが大切です。

行政のリスクコミュニケーションでは、効果的な手法で的確な情報伝達を行い、市民個人では回避できないリスクの問題について社会的な合意を得る必要があります。そのためには、市民の行動特性を理解し、自由な選択を確保しつつ、より良い意思決定をうながし、より良い行動を引き出す必要があります。

たばこの健康影響を例に考えてみましょう。健康のためにはいますぐ禁煙すべきエビデンスは多くありますが、いまなお日本では約1800万人が喫煙しています。喫煙が健康に有害なことを喫煙者は認識していますが、人々は科学的な合理性だけで行動するわけではないのです。
ムードあふれる情景とあわせてロゴマークを流すたばこ会社の広告は、何となく喫煙者に、たばこはわるくない、たばこを吸いたいという気にさせます。このたばこ会社の情報戦略は私たちも参考にできる点があります。

2017年にノーベル賞を受賞した行動経済学書のリチャード・セイラー教授の「ナッジ理論」は、男性トイレの飛び散り防止のための便器内のハエのマークの例が有名ですが、これは罰則や金銭的報酬を与えるのではなく、さりげなく人々を望ましい行動に向かわせることです。

市民のリスク認知は必ずしも正しいわけではありません。彼らのリスク認知の特徴を知り、必要としている情報を伝えなければ、人々のリスク認知や行動を変えることはできないことを、リスク情報を伝える側が認識することが求められているのです。

諸外国の「ロックダウン」と日本の「緊急事態宣言」
2018年にスイスのダボスで行われた世界経済フォーラムで、ベストセラー「サピエンス全史」の著者で歴史学者のハラリ氏は「来るべきAI×データ時代と相性がいいのは、独裁主義である」と語りました。
一党独裁の中国では、コロナ感染拡大を防ぐためいち早く都市封鎖を実施し、ロックダウンでもぬけの空になった武漢の街並みは、まだ感染が深刻ではなかった国の人々を驚愕させました。感染の封じ込めと経済の立て直しを実現させた中国は2020年のGDPが前年比で2.2%増えており、いかに一党独裁体制が強いか世界に示しました。民主主義国家であるアメリカやヨーロッパの国々もロックダウンを行っています。

このような中、日本はロックダウンではなく緊急事態宣言による「自粛」の呼びかけを実施していますが、なぜ日本は強制力が伴わない施策を選択するのか疑問に思われた方もいると思います。

ロックダウンを実施できる国の憲法には「国家緊急権」があり、これにより市民に外出制限や罰金、禁固刑を伴う強制力が課すことが可能です。日本でも明治憲法に国家緊急権はありましたが、戦後なくなったため諸外国と同じような施策ができません。

幸い、このような中でも日本は欧米と比べて人口あたりの累計死亡者数を見ると2%弱と圧倒的に少ないです。民度の高さに加えて、地震や津波といった自然災害が多い国で培われた市民の経験がこのような結果をもたらしていると考えられます。

しかし、パンデミックや大地震など想定外の事態は今後も否応なしに日本に襲いかかります。
ワクチン接種が進み、コロナ禍が収束を迎えたとしても、新たな感染症が発生する可能性は十分あります。もし、その感染症が若年層への健康被害が大きく、致死率が30%以上のウイルスだったらどうでしょうか?

リスクコミュニケーション及びそれに関連する用語については、食品安全委員会、厚生労働省、経済産業省等により定義や使われ方が若干異なりますが、当協会(RCIJ)では「有事の際に、内外のステイクホルダーと適切なコミュニケーションを図ること。これを迅速に進めるため、平時より準備を進めること。」と定義しています。

コロナ禍という非常事態の中で、これまでなかなか前に進めることができなかった物事を、実現できる可能性が飛躍的に高まっているという側面もあります。そのためには行政として何を大切にし、市民にどのような行動をしてほしいか意思を示すことにかかっています。

リスクコミュニケーションは今後もっと本質的に議論されるべきテーマであり、私たちは有事を想定した危機管理を進めるべきだと思います。

(執筆:RCIJ代表理事 大杉春子)

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