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RCの基礎知識リスクコミュニケーション:今取り組むべき3つのこと

2022.06.17

先日、「リスクコミュニケーションとは」と改めてお話ししましたが、今回はもう一歩踏み込んで、「今取り組むべき3つのこと」について提案させていただくことにしました。

Contents

問い合わせの変化からみるリスクコミュニケーションのトレンド

 

問い合わせの中心が、「リスクの認識」から「具体的な取り組み方」へ

リスクコミュニケーションについてのお問い合わせ内容が、最近変化していることをひしひしと感じます。昨年のはじめくらいまではリスクコミュニケーション担当の社員様や危機管理担当の責任者の方からこのようなご相談が多くありました。

今までのお問い合わせ

「会社にはたくさんのリスクがあるが、企業トップが危機に備えるための意識が低く、どうやったら理解してもらえるか苦戦しております。どうしたら良いでしょうか?」
「まずは上層部にリスクを理解してもらうために現場からボトムアップでできることはありますか」

ところが最近では、

最近のお問い合わせ

「リスクコミュニケーションを強化するためには何から行えばいいですか?」
「社員研修でリスクコミュニケーションを扱うことを考えているのですが、社内でセミナーしてもらうことは可能でしょうか?」
「まずはどのレイヤーの人にどんな知識を持ってもらうのが良いでしょうか?」

どこに変化を感じるかというと、もともとはリスクコミュニケーションといったことば自体を「知らなかった」人たちが多い中で、一部の意識高い人たちからの「リスク意識を広めるには?」という問い合わせに偏っていました。

それが今やリスクに対する危機感を持ったうえで、「リスクコミュニケーションに取り組むには?」という、具体的な一歩を踏み出した問い合わせが多くなってきたというものです。

このようなお問い合わせの変化は、近年リスクコミュニケーションを啓蒙してきた私たちにとってとても嬉しい変化です。

 

平時こそがリスクコミュニケーションに取り組むベストタイミング

では、「リスクコミュニケーションを最近意識し始めた私は、まだ取り組むのは早いのか?」と言われると、そうではありません。具体的に考え始めた人たちはリスクコミュニケーションに取り組み始めていますが、今リスクコミュニケーションを意識し始めた人にとっても、早いわけでも、遅いわけでもありません。有事に備えてリスクに対する準備・対策を実施することは、非常に重要です。

なぜなら、平時だからこそ余裕を持って有事に備えることができるからです。「まだ早い」「今からでは遅い」といったことばは、リスクコミュニケーションにはありません。もし、今日初めてリスクコミュニケーションを知ったとしても、この記事を読んでいる今こそがまさに、リスクコミュニケーションに取り組み始める最適なタイミングと言えます。

 

リスクコミュニケーション:今取り組むべき3つのこと

では、リスクコミュニケーションについて真剣に考えて実行するために、どんなことから取り組めば良いでしょうか? 早速「今取り組むべき3つのこと」についてお話しします。


リスクコミュニケーション、今取り組むべき3つのこと:

その1 リスクセンスを磨く

 

・リスクトレンドに敏感になる

 

数年前に何も問題にならなかったことがリスクになることも。

新型コロナの世の中になって以降、世間では炎上案件が増加したと言われています。不安定で先の見えない状況が続く世の中では、人々がちょっとしたことに過敏に反応したり、不安から極度の不信感を抱きやすくなる特性が出てきます。RCIJの講義の中でも出てきますが、これを「不寛容社会」と呼んでいます。

例えばコロナで多数報道された「自粛警察」。公園で遊ぶ子供を見て警察に通報したり、他県のナンバーの車を撮影してネット上に公開する他県ナンバー狩りは記憶に新しいかと思います。このように、3年前までなら笑って済ませるどころか何も問題が起きなかったことも、有事においては炎上の源となるわけです。今がどのような世の中で、何が受け入れられやすくて何が反感を買いやすいのか、これらを見極めるためにリスクトレンドに敏感になることは非常に重要なのです。


・競合他社の炎上に目を向ける

 

炎上は「対岸の火事」ではなく「明日は我が身」という視点で見る。

企業に置き換えてみるといかがでしょうか?「バイトテロ」と言われるアルバイトが店舗であり得ない行動をSNSで投稿したり、期限切れの食材を外部へ販売していることが見つかったり、某飲食大手チェーン店のトップが外部講師を務める中で不適切な発言をしてしまったり・・・記憶を辿ると皆さんもよくご存知の炎上案件が多数思い浮かぶのではないかと思います。

日々のニュースの中で、自分たちの業種や業界にまつわるリスク事案に目を向けてください。「明日は我が身」という言葉があるように、対岸の火事を見る心持ちではなく、いつ何が自社で起こってもおかしくないということを念頭におき、ジブンゴトとして他社案件に目を向けることが重要です。


・最新の事例に目を向ける

 

気をつけるべきなのは「過去」よりも「今」の炎上事例

日本リスクコミュニケーション協会(RCIJ)が提供する講義でも気をつけていることがあります。それは、常に最新事例に目を向けることです。古い事例も基礎を学ぶ上ではもちろん重要ですが、今何が炎上するのか?どんなことに人々は反応しやすいのか?を知ることは危機を乗り越える意味でも大変重要です。リスクコミュニケーションの原点は、とにかく「有事に備えて平時にいかに取り組んでおくか?」です。自社や自分たちの組織に起こり得る事案を学ぶためにも是非、最新事例を入手し、組織内にシェアしていきましょう。


リスクコミュニケーション、今取り組むべき3つのこと:

その2 身近なリスクトップ10を探して優先順位をつける

 


・どんなリスクがあるか、まずは自分の頭でピックアップしてみる

まずは自分なりに今いる組織の中のリスクを洗い出してみることです。組織内外問わず、どんなレベル感でも構いません。「もしもこんなことが起こったら」と考えてみてください。

もし10個浮かび上がらなくても、5つでも3つでも構いません。逆に10個以上でも構いません。とにかく考えてリストアップすることが重要です。


・事業担当など組織内の人とリスクについて何があるか話を聞いてみる

次は、第三者に意見を聞いてみましょう。ご自身がピックアップしたリスクについて周りにいる同僚や先輩、上司と話をしてみることは、皆さんを巻き込んだ議論に繋がります。

あなたがもしリスクコミュニケーターと言われる、組織をまたいで危機対応するハブのようなポジションで、会社全体を見回すことができていたとするならば、必ず皆さんから「今一番気になっているうちの会社のリスクは何ですか?」という問いかけに答えてくださるに違いありません。


・社長や事業部長にもリスクについてどう考えているか問いかけてみる

さて、洗い出したリスクを今度は可能であれば、事業部長や社長に投げかけてみることも有効です。これを読まれている皆さんは少なからず、会社の中のリスクにどう立ち向かい、有事になる前の平時のうちにいかに備えておくかを考えていることでしょう。「ずばり、社長や事業部長が考えるこの会社の今月のリスクトップ3は何ですか?」と聞いても良いですし、「この会社の最大のリスクは何ですか?」と聞くのも有効でしょう。


・どうしても困ったら外部が調査したデータを参考にする

どうしてもリスクが見つからない場合、「当社にリスクはありません」とは判断しないでください。リスクのない組織はありません。リスクに思いあたることができないだけの可能性が高いので、さらに視点を切り替えてみましょう。

例えば、外部調査データを自社に照らし合わせて考えるのもひとつのやり方です。ハラスメント事案や情報管理のずさんさなどヒヤリハットの事案がないか探してみましょう。

今年の1月に発表された米国の調査会社ユーラシア・グループ(*1998年に米国で設立された世界最大規模の政治リスク専門の調査・コンサルティング企業)の予測によると、世界的リスクの第一位として、中国のゼロコロナ政策の失敗が挙げられていました。

さて、その影響は現在どのように及んでいるでしょうか?

2022年の6月現在、大問題になっているのは主に家電製品です。洗濯機は主に中国の工場で作られているため、コロナの陽性患者が出るたび、都市部が封鎖される中国が原因で、日本は品薄状態です。部品の調達もままならないため、エアコンなども作れない状況が続きそうだという報道が流れています。

このように、外部調査機関が発表することに目を向けるだけでも、自社がメーカーや製造業であれば、調達リスクや売上減少リスクが浮上してきます。

●ユーラシア・グループ世界10大リスクレポート(日本語版)
https://www.eurasiagroup.net/siteFiles/Media/files/EurasiaGroup_TopRisks2022_Japanese.pdf

●英語版
https://www.eurasiagroup.net/files/upload/EurasiaGroup_TopRisks2022.pdf


・最終的にリスクの優先順位付けを行い、トップとも共有する

 

何か起きた時に急に完璧な対応をすることはほぼ不可能です。

リスクをかき集めたら、まずは似たようなリスクをまとめ、最後に優先順位付けをしてみましょう。影響範囲の大きなもの、一度発覚すると芋づる式に危機に晒されて解決が難しい類のものが上位に来るはずです。

ここまできたら、リスクに対して日頃から準備しておかないと、危機に変貌した時に恐ろしいことになってしまうだろうと気づくことができます。

何か起きた時に急に完璧な対応をすることはほぼ不可能です。危機対応が上手な会社ほど、日頃から対策をしており、社内にも何がリスクでいざとなった時にどのように対応すべきかが行き渡っているため、大きな事故を防ぐことができています。

優先順位をつけた後は、企業の経営陣と共有をして対策する準備を整えましょう。

 


リスクコミュニケーション、今取り組むべき3つのこと:

その3 リスクコミュニケーションの体制を整え、安心して攻めに挑める組織にする

 

ステップの最後は、組織内で何をどう始めたら良いか、実行までの道筋を決めることです。そして、その目的は、安心して攻めの体制にできる組織を作ること。そのためにどんなことをやっていけば良いでしょうか?

 

・自分たちでできるところまで設計し、模索する

会社や組織のカルチャーにも寄りますが、外部に頼むにしてもどのようにリスクコミュニケーションに取り組んでいくか、組織内で方針を固めることは非常に重要です。

何をいつまでにどのような状態にしたいか。これが明確になれば、外部サービスをどのように使うか、またどのようにすれば社内に浸透できるかの施策が見えてきます。

 


・マネジメント陣に「リスクコミュニケーション」について知ってもらう。

リスクコミュニケーションに真剣に取り組むためにも、自社に照らし合わせたリスクの洗い出しと優先順位付けから予測される必要な対策について経営に近いマネジメント層で議論することが必要です。

これをマネジメント層の議論のステージへと載せるために、「リスクコミュニケーションとは何か?」「もし取り組まなければどんなことが起こるのか?」をレクチャーする必要があるでしょう。一つだけ念を押して言いたいことは、リスクコミュニケーションの実践をすることは、「安心して攻めることができる組織体制を作ること」につながるということです。

当サイトのマガジンの中にも様々なコラムがありますので是非ご一読いただきたいですし、このマガジンで一番はじめにお話しした、リスクトレンドの共有、競合他社のリスク事案を共有することが効果的でしょう。「自分たちの身近に起こりうるリスクに備えれば、安心して攻めの組織に転ずることができる」このことを経営陣に提示することはリスクコミュニケーションに全社で取り組む近道になるでしょう。

 


・全社に浸透させるためのコンサルティングや研修選びを行う

マネジメント層の話し合いの末、企業や組織でどのように浸透させていくか自社でオリジナルで実施することも可能ですが、外部コンサルティングや研修機関に依頼するのも手です。24時間365日でSNSを中心としたインターネットを監視し、炎上を検知するシステムを持っている企業や、危機管理広報に特化してメディアトレーニングを実施するPR会社などもあります。

RCIJでは、リスクコミュニケーションのトップランナーで構成された講師陣による講座の提供、及び現場の皆様に浸透させるためのそれぞれの企業向けにアレンジした特別プログラムの提供も実施しています。是非お問い合わせください。

 


・実行に向けて予算と時間の確保をして、安心した攻めの体制ができる組織に!

最後にお伝えしたいことがあります。それは、リスクコミュニケーションの実戦に向けては、まずはしっかりと時間と予算をかける心持ちで挑むことが大事であるということです。企業がリスクに備えてかける予算は、アメリカでは大企業で年間数億円と言われています。特に訴訟文化のアメリカは、対策をしておかなければ訴訟で敗訴すれば数十億円、数百億円の損害が生まれます。その前に対策をしっかりとしておくことは至極当たり前ということなのでしょう。

さて、しかしながらこのコラムでは、「リスクコミュニケーション、今取り組む3つのこと」がテーマです。
いきなり予算確保が潤沢に確保できない企業様も多数あることを鑑みますと、まずは中にいる皆様一人一人が一生懸命に考えて、所属する企業や組織の規模に応じて出せるだけの予算を確保して、最も難しい経営陣や従業員の皆様の時間の捻出をしていただくことが重要でしょう。そのために、リスクに備えることが実は安心して攻めることができる「企業の利益体質づくりの第一歩である」ことを説明し、熱意を持って組織に提案されることをお勧めします。

 


リスクコミュニケーション、今取り組むべき3つのこと まとめ

「リスクコミュニケーション、今取り組むべき3つのこと」、みなさま、いかがでしたでしょうか。
この1年〜2年で随分と日本企業や組織の中でリスクコミュニケーションへの取り組みの意識が変わってきたなという実感があるからこそ、今取り組むべきことをお伝えできました。

その1:リスクセンスを磨く
その2:身近なリスクトップ10を探して優先順位をつける
その3:リスクコミュニケーションの体制を整え、安心して攻めに挑める組織にする

3つにまとめましたが、そのなかでもステップが分かれているので、自力で取り組むには難しいと感じられる方もいらっしゃるかもしれません。

そのようなときに、支えにしていただきたいのが、当協会、RCIJです。
いつ、どんなタイミングでも取り組めるように、リスクコミュニケーションのどのステージの方にでも最適なアドバイスができるように、最新事例を揃え、多方面に渡る専門家がアドバイザーとしてスタンバイしております。

お困りの方は是非RCIJにお問い合わせください。30分の無料相談を、適宜受け付けております。

 

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