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コミュニケーション戦略2025年リスクをよむ

2025.02.03

企業を取り巻くリスクは、デジタル技術の進化と国際情勢の緊張により、その姿を大きく変えています。企業の危機管理担当者は、これまでにない複雑な課題への対応を迫られています。本稿では、主要な国際機関や研究機関が分析した重要リスクを踏まえながら、日本企業が直面する課題と具体的な対応策について解説します。

2025年のグローバルリスク

今年発表された主要機関のリスク分析では、世界秩序の大きな変化が指摘されています。特に、米国の政治動向、米中関係の行方、そして世界各地での地政学的緊張の高まりが、最重要リスクとして挙げられています。各国の主要機関が警鐘を鳴らす2025年のリスク予測は、今年1月時点で、すでにその多くが現実のものとなりつつあります。

世界的な貿易摩擦の深刻化、各地での政治的な対立、そしてサプライチェーンの混乱は、まさに私たちが日々直面している課題です。


表:主要機関まとめ_2025年のグローバルリスク
特に注目すべきは、以下の三つの大きな潮流です。

  1. アメリカを起点とする世界秩序の変化

    最も多くの機関が指摘しているのが、アメリカの政治動向、特にトランプ氏の動向が世界に与える影響です。ユーラシア・グループ、PwC、PHPグローバル・リスク分析など、多くの機関がこれを最重要リスクとして挙げています。「アメリカファースト2.0」と呼ばれる政策の影響は、貿易関係や同盟関係にまで及ぶ可能性があります。

  2. 深まる米中対立の影響

    第二の共通点は、米中関係の悪化です。貿易戦争の再発から「米中決裂」まで、様々な形で警鐘が鳴らされています。特に注目すべきは、この対立が単なる二国間の問題ではなく、世界経済全体に大きな影響を及ぼす可能性が指摘されている点です。

  3. 地域紛争と国際秩序の不安定化

    中東情勢の混迷、東アジアでの緊張、欧州での政治不安など、世界の各地域で予測される不安定要因も、多くの機関が共通して指摘しています。これらの地域紛争は、エネルギー供給や国際貿易にも影響を及ぼす可能性があります。

2025年に注視すべき5大リスク

RCIJの代表理事は、世界の主要機関のリスク分析で共通して指摘されている要因を、企業経営の視点から再構成し、以下の5つを2025年の重点リスクとして提示しています。

  1. 地政学リスク
  2. レピュテーションリスク
  3. ガバナンス・コンプライアンスリスク
  4. テクノロジーリスク
  5. 自然災害・気候変動リスク

これらのリスクは、独立して存在するのではなく、相互に関連し、時には連鎖的に影響を及ぼし合います。例えば、地政学リスクは調達網の混乱を招き、それが企業評判に影響を与えるといった具合です。

リスク管理体制の不備がもたらす批判

今、企業のリスク対応に対する社会の目は、かつてないほど厳しさを増しています。特に注目すべきは、企業の「予見可能な事態への準備不足」に対する批判です。同業他社が既に対策を講じているリスクへの備えを怠った場合、その企業の危機管理能力そのものが問われることになります。

また、問題が発生した際の「初動対応の遅れ」も厳しい批判の対象となっています。問題を把握していながら対応が遅れる、現場と経営層の連携が取れていないなどの状況は、被害を拡大させる要因となり、企業の信頼を大きく損なうことにつながります。

さらに深刻なのが、「情報開示の不十分さ」です。重要な情報が隠されている、説明に一貫性がない、都合の悪い情報を後出しするといった対応は、企業への不信感を助長します。これに加えて、具体性を欠いた再発防止策の提示や、経営陣の説明責任の不履行は、企業の姿勢そのものへの疑問を投げかけることになります。

ステークホルダーへの配慮不足も見過ごせない問題です。被害者への対応、取引先への影響考慮、株主への説明など、関係者への適切な対応を欠くことは、企業の社会的責任を果たしていないとの批判につながります。

2025年に向けた重点リスク対策

では、このような批判を回避し、企業価値を守り高めていくため、どのような対策ができるでしょうか?ここからは3つの対策を重点リスク対策としてご紹介したいと思います。

第一に、レピュテーション管理体制の確立です。SNSの影響力が増す中、企業の評判は一瞬にして損なわれる可能性があります。そのため、専門チームによる24時間体制での情報監視、AIを活用した分析、そして問題発生時の迅速な対応体制の整備などがこれに当たります。平常時からの積極的な情報発信も重要で、経営者自身による発信や社会貢献活動の紹介などを通じて、ステークホルダーとの信頼関係を築いておく必要があります。

第二に、グローバル事業継続性の確保です。世界情勢の変化に対応できる強靭な事業基盤の構築が求められています。地政学的なリスクを考慮した調達先の分散化、重要部材の適正在庫の確保、取引先との緊密な関係構築などが重要です。また、生産拠点の最適配置やバックアップ体制の整備も欠かせません。

第三に、危機管理人材の育成です。次世代の危機管理を担う人材の育成は、最も重要な投資の一つといえます。リスク管理の基礎知識から実践的なコミュニケーションスキルまで、総合的な能力開発が必要です。また、実際の事例に基づくシミュレーション訓練や、部門を超えた協力体制の構築も重要です。

おわりに

リスク対策は、単なる防衛的な取り組みではありません。適切な対応は、むしろ企業価値を高める機会となります。経営層の明確なコミットメント、全社的な危機管理意識の醸成、そして継続的な改善への取り組みが、これからの企業経営には不可欠です。

2025年の企業経営において最も重要なのは、「変化への対応力」です。社会の変化に合わせて常に進化し続けること。それこそが、企業の持続的な成長を支える基盤となるのです。

企業を取り巻くリスクは、その姿を日々変えながら、私たちに新たな課題を突きつけています。しかし、適切な備えと対応力があれば、それらは必ずや成長の機会となるはずです。

​​日本リスクコミュニケーション協会(RCIJ)は、「変化の波を先取りする」という攻めの姿勢で、企業の危機管理体制の高度化を支援してまいります。デジタル社会における新たなリスクマネジメントの在り方を、会員企業の皆様とともに探求し、実践していく所存です。

 

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