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炎上のトレンド中国のカントリーリスク

2021.04.12

中国・新疆ウイグル自治区での人権問題を巡って、国内企業が対応に追われています。国際社会からの批判が高まっている中、中国に関係するビジネスを行う企業にとって、カントリーリスクが大きな火種となっています。このような情勢の中、企業としてどのようなリスクコミュニケーションを行えばよいのでしょうか?

どんなリスクが想定されるか?

中国は日本企業にとって、地理的にも経済的にも身近で関係の深い国です。中国のカントリーリスクが高まった場合、企業にとってはいつ状況が変化し危険な事態に陥るかわかりません。
大まかには、以下のように中国国内に拠点がある場合とない場合と、そうじゃない場合にリスクは分類されます。

①中国国内に拠点がある場合のリスク
中国の公安当局の力は大きく、国策として驚異的なスピードで各施策が行われるため、中国国内でのカントリーリスクは流動的で予断を許さないリスクといえます。

・中国人消費者による不買運動
・公安当局による従業員の拘束
・中国当局から日本の民間企業との取引制限
・現地法人への中国当局からの圧力や介入
・反日デモによる攻撃 など

②日本国内と諸外国のレピュテーションリスク
企業の社会的責任が重視される中、調達先の工場など関係する取引先で、強制労働があれば間接的な人権侵害への加担につながるとされます。

・消費者やメディアによる批判リスク
・機関投資家、海外投資家や株主による批判リスク
・株価下落
・投資の引き揚げや取引停止
・ブランドの毀損 など

綿密なコミュニケーションプランが必要

ユニクロの柳井会長は4月の決算会見で、「これは人権問題というよりも政治問題。われわれは政治的に中立なんで。これ以上発言する政治的になりますんで、ノーコメントとさせていただきます」としてこの発言が報じられた後、翌9日の同社の株価は大きく値を下げ、終値は前日比マイナス3090円の8万7890円になりました。

人権問題をめぐっては、アパレル業界などで、ウイグル産の綿花を使わないなどと表明した企業が中国で不買運動に遭っており、一方で中国に配慮した発言をした場合は日本や欧米などで批判が高まっているため、企業は批判リスクを背負ってウイグル綿を使い続けるか、取引をやめて中国で不買運動を起こされるかの板挟みで難しい選択を迫られています。

企業の短期的な利益追求よりも経営の持続可能性が求められる中、人権を含む社会問題や環境問題への企業責任を重視する投資家からの圧力も強まっています。

もともと日本のメディアは「ノーコメント」とするコメントに批判的な傾向が強く、特にカントリーリスクが高まる中での発言は、企業として十分に配慮を重ねた準備をする必要があります。

国内外で各企業の対応

元になったのは2020年3月に発表された、オーストラリアのシンクタンク(ASPI)の調査結果で、ナイキ、アディダス、アップル、サムスンを含む多国籍企業83社が、ウイグル人が強制労働させられている中国各地の工場と関係があると発表しました。

これに対し、強制労働問題に懸念を示したH&Mやナイキらが中国国内で不買運動の対象になっています。

このうち指摘された日本企業に含まれるのは日立製作所、ソニー、TDK、東芝、京セラ、三菱電機、ミツミ電機、シャープ、任天堂、ジャパンディスプレイ、パナソニック、無印良品、ユニクロ、しまむら。パナソニックは無回答で、そのほか13社は質問状に回答する形で強制労働への関与を否定しました。

このほか、中国の販売比率が低く、製造拠点がないカゴメが、国際社会から少数民族に対する人権侵害が指摘されているを判断材料の一つとしてウイグル産のトマトの使用を2021年中に停止すると発表しています。

リスクコミュニケーションの観点からは今回の対応で注目したいのが、無印良品です。

同社は4月14日に”無印良品の綿とサプライチェーンについて”と題したプレスリリースを公式サイトに掲出し、人権の尊重や労働基準の管理に努めているとした上で「生産工程において法令や弊社の行動規範に対する違反が確認された場合には取引を停止する方針です」との考えを示しました。

・事業活動においての考え方、スタンス
・認証についての詳細な説明
・サプライチェーンの考え方
・原料調達の考え方

上記の内容に加え、文末にはこれまでの現地の訪問記録と社員の数まで掲載がありました。

良品計画2021.4.14ニュースリリースより抜粋

 無印良品は、過去にカタログに添付された地図に、釣魚島(日本では尖閣諸島)を含む中国の島が記載されておらず、国家測量地理情報局から通達を受け訂正を命じられた経験があり、この時も速やかに謝罪声明を発表しています。これら過去の経験からもカントリーリスクに感度が高いと想定され、今回のニュースリリースの内容は迅速で高度なリスクコミュニケーションであるといえます。

日本では、今年6月に施行する上場企業を対象とするコーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)の改訂案でも、取締役会が取り組みを検討すべき重要な経営課題である「サステナビリティをめぐる課題」として、気候変動などの地球環境問題とともに人権の尊重が初めて明記されました。

中国市場になぜ進出し、その理念、目的はどのようなスタンスであるかについて積極的に情報発信しなければ生き残れない状況が今後も出てきます。

ウイグル問題に限らず、ミャンマーや香港でのデモ弾圧や、気候変動リスクなど様々な社会問題について企業としてどう考え、どう向き合っているのか。その姿勢を世界が注視する時代になりました。

日々入る情報に踊らされることなく、冷静に世の中の動きを観察し、できることから手を打っていきましょう。早い段階から意識しておくことをお勧めします。
日本リスクコミュニケーション協会(RCIJ)では、事業継続の範囲選定から現状分析、構築、教育、演習の全般にわたってご支援します。

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