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コミュニケーション戦略自社のサービスが犯罪に使われたら? 〜レンタカーTuroの事例から学ぶ、企業価値を守るリスクコミュニケーション〜

2025.02.03

自社のサービスが犯罪に使われたら?
〜レンタカーTuroの事例から学ぶ、企業価値を守るリスクコミュニケーション〜

「まさか自分たちのサービスが、こんな形で使われるなんて…」

2025年1月1日、米国を震撼させた二つのテロ事件。カーシェアリングプラットフォーム「Turo」を介して借りられた車両が、ニューオリンズで群衆に突っ込み、15名の命が奪われました。

その4時間後、ラスベガスでも悲劇が続きます。同じくTuroで借りられたテスラが、トランプ・インターナショナル・ホテル前で爆発。1名が死亡し、7名が重軽傷を負いました。

この悲惨な事態に、Turoは想像し得る最悪の新年の幕開けを迎えることとなりました。

しかし、この危機的状況下でTuroが見せた対応は、デジタル時代における企業のリスクコミュニケーションの好事例を示すものでした。企業にとって、自社のサービスが重大な事件に関与するという事態は、最も対応が難しい危機の一つといえます。

なぜ彼らの対応は高く評価されたのでしょうか。そして、私たちはそこから何を学べるでしょうか。

Turoの初動対応

事件発生から6時間以内、Turoは最初の公式声明を発表します。

声明は被害者とその家族への深い哀悼の意を示すことから始まり、続いて現時点で確認できている事実関係を明確に説明。その上で、法執行機関との協力体制や、プラットフォームの安全性に関する現状認識を詳らかにしました。

特筆すべきは、「知っていること」と「まだ分からないこと」を明確に区別して伝えた点です。

危機発生時、多くの企業が「事態を把握中です」「調査を進めています」という形式的な声明で時間稼ぎを図ろうとします。

元ボーイング広報責任者のアクビューロ氏は、この声明を「模範的」と評価しています。

「人々が最も恐れているのは不確実性です。Turoは、知っていることと知らないことを明確に区別して伝えることで、不安を最小限に抑える努力をしました」

トップが共感を示すコミュニケーション

事件から48時間後、CEOのアンドレ・ハダッド氏はCNBCに生出演します。

11分間のインタビューで、彼は経営者としての冷静さと、被害者への共感をバランスよく伝えることができました。

「私たちは深い悲しみの中にいます」という言葉で口を開いたハダッド氏は、続けて重要な事実を明かしていきます。両容疑者が清潔な経歴を持つ退役軍人であったこと、通常の身元確認では予見不可能な事案だったこと、そしてプラットフォームの99.9%が安全に利用されている事実。しかし、彼はこれらの数字を弁解としては使いませんでした。

「一件の悲劇も、多すぎます」という言葉で、統計の背後にある人命の重さを強調しました。

Turoの対応の真価は、その後の具体的な行動にありました。

国家安全保障の専門家との協議開始、新たな監視システムの導入、法執行機関とのリアルタイムな情報共有体制の構築。声明で約束された施策は、迅速に実行に移されていきました。

さらに、これらの施策が単なる防衛的な対応に留まらなかった点です。「私たちは、より良いプラットフォームを作るために、この悲劇から学ばなければなりません」というハダッド氏の言葉通り、各施策は将来に向けた積極的な改善の一環として位置付けられました。

従来型の形式的な謝罪と、調査結果の公表を待つという姿勢では、もはや不十分です。知っていることと知らないことを明確に区別し、現時点での理解と今後の方針を具体的に示すことが求められます。

また、トップの役割も従来とは大きく変わってきています。危機的状況下では、企業の顔となる経営者が前面に立ち、統計的事実と人間的な共感を併せ持った発信を行うことが、信頼回復の鍵となるのです。

さらに、約束と実行の一体性も重要です。声明で示された方針は、速やかに具体的な行動として実現されなければなりません。その進捗を、継続的に報告していくことも欠かせません。

リスクコミュニケーションは形式から実行へ

Turoの事例は危機対応における「説明責任」の好事例と言えます。

従来型の形式的な謝罪と、調査結果の公表を待つという姿勢では、もはや不十分かもしれません。知っていることと知らないことを明確に区別し、現時点での理解と今後の方針を具体的に示すことが求められます。

また、トップの役割も従来とは大きく変わってきています。危機的状況下では、企業の顔となる経営者が前面に立ち、統計的事実と人間的な共感を併せ持った発信を行うことが、信頼回復の鍵となるのです。

さらに、約束と実行の一体性も重要です。声明で示された方針は、速やかに具体的な行動として実現されなければなりません。その進捗を、継続的に報告していくことも欠かせません。

おわりに

デジタル化が進展する現代社会において、企業のサービスが予期せぬ形で悪用されるリスクは、むしろ増大しています。重要なのは、そうした事態が発生した際の対応を、事前に構想しておくことです。

Turoの事例には、現代の危機管理に求められる要素のヒントがあります。透明性の高い情報開示、トップによる誠実なコミュニケーション、具体的な改善行動の迅速な実施、そして継続的な進捗報告。これらを効果的に実行するためには、平時からの準備が欠かせません。

危機は、往々にして最も予期せぬ形でやってきます。しかし、適切な準備と対応により、危機を乗り越え、むしろ信頼を強化する機会とすることも可能です。

Turoの事例は、そのためのロードマップを私たちに示しています。透明性、共感、そして具体的な行動。これらを効果的に組み合わせることで、企業は最悪の事態をも乗り越えることができるのです。

日本リスクコミュニケーション協会は、企業の皆様の危機管理能力の向上を支援しています。あなたの会社は、明日起こるかもしれない危機に備えていますか?ぜひ、私たちにご相談ください。

 

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